ドイツのエネルギー戦略と新産業

海森 寄与師老です。ドイツでの自動車産業は過去最高収益を連発しています。もちろんモノも良いのですが、€安の影響で輸出が好調なのです。しかも輸出先では実勢レートと一致しない価格設定のままで、差益も収益に含まれています。もちろん新車購入補助等のドイツ国内景気刺激策も効果があるのでしょう。自動車産業が外貨を稼ぐ筆頭であることは我が日本と同じですが、今のドイツはあまりにも凄いですね。得た外貨は?

福島第1原発の事故後、ドイツの動きは世界の驚きでしたね。アンゲラ・メルケル首相は事故発生から3日後、老朽化した原発7基を3カ月停止し、全原発の安全検査を徹底するように命じ、’20年の脱原発を決めました。ただし、事故があったそのことだけで、脱原発を決めたのではなくて、政権与野党の入れ替わり等があって、脱原発をめぐる国民議論の蓄積は、既に10年を超えていました。そして、福島第1原発事故が発生し、ドイツ政府は世論を汲んで、再び脱原発の期限を早めたのです。

ドイツが凄いのは、政治や行政の決定事項が、産業界にも、国民にも、直ぐ浸透します。政治や行政で決めるのに先立って、倫理委員会で決めているから、というのもあります。政治判断の材料に、民意や産業や宗教や倫理の、意見を聞く場があるということです。原発用のインフラ機器や蒸気タービンを生産していた、【ジーメンス/独】(シーメンス/英)が、原発産業からの撤退を打ち出しました。再生可能な新エネルギーに研究開発や生産のため人員や予算等のリソースを割くとのことです。暫くは自立産業化出来ないでしょう。ここで生きて来るのが、自動車産業で得た外貨なのです。そうこうするうちに自立産業化出来る様になるでしょう。その頃にはドイツが世界1位の産業になってしまっていますね。その時に自動車産業が斜陽でも、次は再生可能な新エネルギー産業が支えるのです。

我が日本の、【シャープ】が太陽光発電で間違いなく世界1位の技術でした。太陽光発電での売電システムやインフラが日本にはなくて、結果、一般化せず、産業化迄は出来ず、ドイツに先を越されてしまった訳ですよね。そして、その、シャープが経営危機なのです。台湾企業が支援?液晶も太陽光発電も先端技術ですね。伝統的な商品の白物家電も、豊かなアイデアが溢れていますね。日本のモノづくりの技術が詰まった企業なのですよ。海外に流出しても良いのでしょうか?シャープの必要資金は、¥1,000~2,000億です。日本航空には直近だけで、¥3,500億です。東京電力支援に注込するべく用意資金は、¥1~2兆という金額にまでなりますよ。政府は、シャープの支援に乗り出すべきでしょう。多くの従業員を抱え、その周辺企業も含めれば、更に多くの従業員を抱えていますよね。シャープは、今迄は黒字企業として、多額の納税もしました。経営破綻では納税もない。脱原発、再生可能な新エネルギー産業にシフトした場合、【神風】になってくれるでしょう。日本航空や東京電力が経営再生出来たとしても【神風】になんかには、なり得ませんよ。

P.S 私はドイツが嫌いではありません。むしろ大好きですよ。ミュンヘンのピーアー・ハレでビーアーを呑んだら、誰だって好きになりますよね!モノもドイツ製は凄い良いですね。しかし、技術上は、公正な競争が望ましいと思っていますよ。再生可能な新エネルギーにシフトした場合に、ドイツ製太陽光パネルや風発用風車だけが、日本の風景になるのは避けたいと思っていますし、日本でも新エネルギー産業が根付くことを強く望んでいます。何よりも、日本製のモノだって、ドイツにも適度にあるべきです。

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