【新規追記】チリ合わせについて!

海森 寄与師老です。《デイトナ675のレーシングカウルのチリ合わせをする予定です》の、【チリ合わせ】とは何?という質問が、あるライダーからありましたよ。知らないんだ?知らないことを聞くのは一時の恥なんていいますけど、質問し過ぎるのもどうなのかな?

簡単な内容なので、【投稿】しますね!デイトナ675のレーシングカウルのチリ合わせは、予定通り終了しています。面倒臭くて、つまんなかったです。作業中の写真はないです。そんなの撮る時間があったら作業なんて早く終わらせて、別の行動に移りたいのです。

私は基本的にモーターサイクルを弄るのは(自動車だったら尚更)好きではありません。整備屋に持って行くより、早いし、安いし、ですから、仕方なくやっていることなんですよ。当たり前のことですが、弄るよりも、乗る方、出かける方、が遥かに好きなんですけど!

折角、夷隅郡市に帰った時に限って、こ汚いポンコツなのに、千葉県に持って来たため、【しょったれた】埼玉県ナンバーのモーターサイクルを修理する者の気持ちになってみ!ずっと夷隅郡市(および長生郡市、山武郡市)にいるのだから自分でやれば良いのに!

 

●チリとは

建築用語で段差を意味しますよ。柱や梁の面よりも漆喰面の方が奥に入っていますね?それは何故?は此処では割愛します。この段差を設けるのを、【チリ】(散り)といいます。建築用語では、段差をなくす作業は、【ツライチ】(面一)といいますよね。土木用語では、段差はそのまま、【段差】。【チリ】とはいいません。値が大きいから?m単位ですから!段差をなくすのは事実上不可能!段差間は、【法面】(のりめん)で繋ぎ、必要に応じて、【法面補強】もします。建築や土木が専門ではないので詳しくはそちらにご質問ください。

●チリ合わせとは

自動車修理・板金業界では、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、の様なボディパネル(面を持つ部品)同士の段差や位置や面を合わせることを、【チリ合わせ】というのです。【チリ】は建築用語からの借用の様ですが、使われる内に意味が変化していった様です。現在では、建築用語の、【ツライチ】(面一)に近いニュアンスになってしまっていますね。

●モーターサイクルでのチリ合わせ(用語)の使用例

自動車修理・板金業界と同義で使います。ナンバー付きモーターサイクルでは面を持つ部品(カウル等)があっても、ABS樹脂製。靭性高く、曲げ疲労強く、分割線も多いため、適当に付きます。つまり、ナンバー付きモーターサイクル修理で使われないことばです。そこで働く整備士達は自動車修理や板金を勉強しているので知識としてはあるでしょう。ですから、自動車修理・板金業界と同義なのですが、事実としてその作業はありません。

●チリ合わせしなければならないのは何故

自動車、モーターサイクル問わず、プレスや溶接で出来た部品、型で造る樹脂部品は、公差が大きいです。自動車のフレーム・ボディは前部のボルト・ポイントを基準にすると、後部のボルト・ポイントで30mm程は位置の個体差が出ますね。モーターサイクルの場合フレーム・ボディで10mm程。機械加工のエンジン部品は、10μm程しか変化しないのに。この公差の吸収のためボディパネル部品取り付けは、この範囲で動かせる様にします。機械設計用語で、【公差吸収設計】といいますが、生産や修理現場で調整が毎回必要。ナンバー付きモーターサイクルのカウルでは、ABS樹脂製にして靭性を上げ、取り付けで公差を吸収、更に分割線を多くすることで公差の集積が発生しない様にして夫々の場所に適当に付く様にしています。ロードレーサーに使われるCFRPやGFRPのカウルでは、空気抵抗低減を重視するので分割線は極力少なくします。カウルの型がフレーム・ボディ(こちらも公差が大!)にピッタリだとしても、凝固収縮や形状変化が大きくなるモノです。公差が大きい上に、公差吸収も出来ない構造なのです。カウル自体の剛性が高いため、応力をかけると割れてしまいます。応力がかからない状態で取り付ける必要もあります。そのために、車体とカウル、カウル分割線隣同士で、【チリ合わせ】が必要になるのです。モーターサイクルでは、ロードレース関連だけで使う、特殊なことばといえるでしょうか?

 

P.S チリ合わせには、本業かどうかはさておき、作業者の技能の高さとノウハウが要求されます。修理業の者よりも、設計を生業にしている者の方が上手かったりしますよね。自動車だったら、板金修理やエアロパーツ装着等、かなりのお金が取れる仕事ですね。モーターサイクルでは、『そんなんで工賃取るの?』とかいわれ、お金にならない仕事で。チリが大きい中古の自動車は、事故歴があったり修理が不十分の可能性が高いです。チリ合わせで吸収出来ない程、フレーム・ボディが歪んでいると思われます。解ります?

tinnesbrunilda@mailxu.com butrick-tatiana