【約数】の話。数学の話ではない!

海森 寄与師老です。【約数】とは、ある整数を割り切ることができる整数のことですね。数学の知識をひけらかす訳ではないのですけど。大した知識もありませんしね。しかし、特にライダーの方には読んで頂きたいのです。【約数】にすることはマズイことなのです。逆の関係にすれば、【倍数】ですが、ここでは減速比でいいますので、【約数】としますね。

実はトランスミッションやファイナルドライブ等の動力伝達装置の減速比(変速比の逆数)は自動車のFR車の5速マニュアルトランスミッションの直結4速以外、【割り切れない数】。これが何故なのか?不思議に思ったことがあるでしょう?ギヤレシオの計算をするときに何でこんなに小数点以下が多いんだろうか?と。キッチリした数字なら計算が楽なのに!

割り切れる数、【約数】だと特定の歯が毎回同じ歯に当たるために、偏磨耗になります。全ての歯に当たる様に、設計時にギヤ比を上手く調整します。割り切れなくても、ギヤの歯数が整数なので分数では表せます。1度噛みあった箇所が再度噛みあうタイミングは、何周も先で、それまでの間に他の組合せ同士で噛みあうことになります。解りますかね?

1箇所に不具合が生じると、同じ箇所だけで噛みあうと其処だけが直ぐ駄目になります。その防止の意味があるのです。駄目な箇所が全てに波及しますが、全部を1度に交換がセオリーですし、1箇所だけ極端にダメージを受ければ、あっという間に運転不能ですね。ギヤの1つの歯だけ交換出来ませんし、小さな不具合だったら全体で慣らしてしまおう!という考えです。子育ては特定の両親だけではなく、地域全体で!と似ていますかね?

◎あるモデルのドライブチェーンの例です。全て、【割り切れない数】設定されています。入力でも出力でもなく、チェーンは伝達するだけで、チェーンリンク数は動力性能に影響しません。しかし、噛みあい機会からドライブ/ドリブンスプロケとの比も、【割り切れない数】に設定することが重要。チェーンと同じく、伝達するだけのアイドラーギヤでも同様です。ちなみにTとは、teeth(歯の複数形)の意です。丁(安定や偶数の意)ではありませんよ!

ドライブスプロケT17/ドリブンスプロケT45/減速比=2.647/ドライブチェーンリンク数110

リンク数とドライブスプロケの比=6.471/リンク数とドリブンスプロケの比2.444

実際には個人で弄っていると、以下の様な組合せが出来てしまうことがままありますね。特にスーパーカブ系エンジンのミニバイクでロングスイングアームにするとあり得ますね。【約数】の組合せ!泥噛みする可能性のあるオフロードタイプのモーターサイクルでは、特に避けるべき組合せ仕様内容。仕様の途中経過を試運転するだけに止めましょうね。こうならないため何処かを、【素数】にすれば良いのですが、難しくなるので割愛します。

ドライブスプロケT15/ドリブンスプロケT30/減速比=2.0/ドライブチェーンリンク120

リンク数とドライブスプロケの比=8.0/リンク数とドリブンスプロケの比=4.0

◎エンジン内部のカム駆動は減速比=2。これは仕方ありません。エンジンストロークに連動させなければ機能しません。それでもクランクのスプロケットやギヤが回転する度、噛みあうチェーンやアイドラーギヤのリンクや歯が、入れ替わる様に設計していますよ。伝達のチェーンやアイドラーギヤのリンク数や歯数は偶数に設計します。クランクシャフトのドライブスプロケットやギヤは奇数にします。カムシャフトのドリブンスプロケットやギヤは偶数(奇数*2だから)になってしまいますが、偶数同士でも、【割り切れない数】に設定が重要。チェーンやアイドラーギヤの噛みあいが入れ替わることで成立しているのです。

ドライブスプロケットT5/ドリブンスプロケットT10/減速比=2.0/カムチェーンリンク数42

リンク数とドライブスプロケの比=8.4/リンク数とドリブンスプロケの比=4.2

8.4や4.2は割り切れているだろ?いいえ、解が整数でなければ、【割り切れない数】です。こちらは個人で仕様変更することはないだろうと思いますので、深くは説明しませんが、奇数リンク数ではオフセットリンクを使うため、チェーン強度が下がる要素もありますよ。

◎自転車の外装変速機は現在最大で3*10で30段変速が可能。コンプリートのモノでは、最高級品で、ロードが2*10の20段、マウンテンが3*9の27段。私のは、2*9の18段です。コンプリートのモノは、どの組合せでも、【約数】にならない様に設計されているそうです。個人で組合せたモノでは発生しますが、変速はディレイラー(脱線機/鉄道用語でもある)でチェーンを脱線させて行うので、同じ組み合わせで運転し続けることはない訳ですし、高速回転もしないし、高負荷でもありませんので、まあ良いか!ということだそうですよ。

jervis@mailxu.com