エンジンの名機の話です!読んで!

海森 寄与師老です。普段エンジンの仕事していて、エンジンを述べるなんて薄っぺらいけど、私の主観で名機を語ります。

いすみ鉄道を走るキハ52にはDMH17系エンジンを2基も搭載しています。戦時経済下で最初に開発されたこのエンジン、その後の長きにわたり国鉄気動車基本エンジンでした。私は名機と思っています。皆さんも歴史ある名機を味わいに、いすみ鉄道にいらしてね!

自動車はT型フォード、フォルクスヴァーゲンビートルなど名車といえるものがあります。それらのエンジンは流用、生産都合でエンジンモデルを変更したりして名機とはいえず、また自動車業界は排気ガス浄化においては、軍用、船舶、鉄道、産業エンジンより遥かに先を行く技術がありますが、やはり開発、生産都合でエンジンモデルの変更があって、1モデル10年未満ほどしかエンジンモデルの寿命がないために名機は出にくいのですよ。レーシングエンジンはさらに寿命が短く量産もされないため名機にはなり得ないのです。船舶用は熱効率が最も高いのですが、エンジン1モデルの生産台数が極端に少なくて、量産とはいえず名機とはなり得ません。

ここで述べるエンジンとは、レシプロのみです。ロータリー、ガスタービン、ターボプロップ、ジェット、ロケット、は含みません。『2T-Gはヤマハの名機だ!』や、『ハーレィ・ディビッドソンはいい味だ!?』等の【個人の想い】も考慮しませんから。残念なことに技術は軍事と戦時経済下で進歩してきました。私が名機と思うもので平和な時代に開発され完全に民生用としてできたものは、ホンダスーパーカブ用のみです。

●名機の定義は以下の通りです。量産実績の上でのことです。複合もある。

①使用期間が短くても使うことで国運を左右するほどのメリットがあった。

②使用期間が長くても新技術を取り入れて常に最新型として存在し続ける。

③使用期間が長く誰にでも使用でき誰もが自分達で模倣製作してみたくなる。

④使用期間が長く新技術適用せず使い続けることで使用者にメリットがある。

 

以下に私が名機と思うものを載せます。読んでも普段の生活に役立ちませんよ!

●メッサーシュミットBf101用ダイムラーベンツDB605ガソリンエンジン例①

高圧縮低回転型として、当時燃料事情の良くなかったドイツ国情に合致させた。燃料直接噴射装置搭載、倒立V型12気筒でエンジン中央に機銃が通せる構造、通常と異なり1速と2速の間が流体トルクコンバーターにより無段階に変速できるスーパーチャージャー等、非常に高度で複雑な機構を多数採用。第2次世界大戦前半には敵国機に対する優位を保った。バトル・オブ・ブリテン空中戦では、キャブレター仕様でマイナスGがかかると燃料供給が一瞬途切れるイギリス戦闘機に対して、燃料直接噴射装置仕様なので爆撃装備をしていても戦闘能力が上だった。急降下爆撃という任務に必須の装備でもあった。その後イギリスは防空レーダーを実用化したためドイツ空軍機の優位はなくなり、戦略爆撃はV-1パルスジェット、V-2ロケットに暫時置き換えられた。戦車とは違い軍用航空機では第2次世界大戦以降はレシプロエンジンは新規開発、改良されることはなく、ジェットエンジンの時代となっていった。

写真はドイツ・シュツットガルトのベンツ・ムゼウムにて。エンジン、カクイイ!

●ボーイングB29用ライトR-3350ガソリンエンジン例①

私の勤め先の技術顧問(故人)が陸軍航空技術廠出身だったため、このエンジンについては良く聞きました。曰く『名機とはバカチョンでなければいけない。金星だ誉だなんていったって操り手の達人の熟練度を期待したものはクズだ。誰が操縦しても敵国の兵器の届く上を行き、高射砲にも当たらない高度10,000mで飛来できることが時代が求めていた技術なんだ!不時着したB29のエンジンを分解したが、ターボチャージャーを見て、この戦争は負けたと思った。』そうです。当時の日本軍機は非過給か効率の悪いターボチャージャーで1段過給がやっと。燃料事情はドイツよりもさらに悪く、本土空襲の頃はヒマシ油で迎撃戦闘機が飛んでる状態。同時代のライトR-3350はバリバリのハイオクタンガソリン焚いて2段過給し、低空では出力が出過ぎるのでガバナーで出力制御していた。しかし複列星型18気筒というレイアウトはプロペラ航空機以外に使い道がなく、B29は朝鮮戦争ではジェット戦闘機MiG15の餌食になりやすく昼間爆撃任務から外れ、その後の主力爆撃機はジェットエンジンのB52になった。私個人はカクワルなエンジンだし、名機だとは思わないけれども、元上司を偲びました。

●ソ連陸軍BT-7M戦車用V-2ディーゼルエンジン例①②

後のグラスノスチによって明らかになったが、1931年5月の第1次ノモンハン事変に投入したガソリンエンジンのBT-7は関東軍(日本陸軍)の火炎瓶、肉弾攻撃によって大損害を出した。同年7月からの第2次ノモンハン事変に投入したディーゼルエンジン型BT-7Mは火炎瓶、肉弾攻撃の耐性が高く損害が小さく済み、関東軍撃退に大きな効果をもたらした。このエンジンは倒立V型12気筒ドライサンプ方式を採用し、車両が転倒してもエンジンにダメージがなくスロープを転動させるか他の戦車による牽引で正立させるだけで戦線に復帰できる。BT-7M以外にもT-34中戦車、KV重戦車シリーズ、IS重戦車シリーズなどのソ連軍の主力戦車のエンジンとして採用された。さらに第2次世界大戦後も、V-2エンジンの改良型がソ連・ロシア軍戦車用として今日まで使用され続けている。

●BMW Rシリーズモーターサイクル用ガソリンエンジン例②③

1923年BMWが造った初のモーターサイクルであるR32から現在まで続くシリーズである。途中で各部を変更されながら生産されてきたため、非常に多数のバリエーションが存在する。 エンジンは空冷水平対抗2気筒、駆動伝達はシャフトドライブが基本である。このエンジンは、車体の左右にシリンダーが突き出すという、モーターサイクルとしては特異な外観が特徴である。第2次世界大戦ではドイツ陸軍斥候用として使用され、機動力とスピードで作戦遂行に大きな働きがあった。対ソ戦で戦線が伸びすぎたのは斥候用モーターサイクルの機動力がありすぎたため、ともいわれている。第2次世界大戦以降は旧東側で模倣され軍用に供され、冷戦終結に伴い民生用に転換されたが、BMWに比べ格段に落ちる性能、品質である。BMWは旧東側模倣者には知的財産権を放棄している。

●ホンダスーパーカブ用ガソリンエンジン例②③

みんなのスーパーカブ。日本の高度成長期を支えた個人動力源。日本生産だけでも1億台を超える。世界中で生産されているが、世界中の模倣のお手本でもあり、中国メーカーに対して知的財産権係争中案件あり。中国側曰く、『漢字教えてやったのに特許料もらってない!』何年前の話してんだ!?でも、このエンジンが模倣されるのは、平和の象徴だと思います。軍用にならなそうだし。

●国鉄気動車用DMH17系ディーゼルエンジン例④

基本設計は第2次世界大戦前に鉄道省で行なわれたもので、このエンジンがあったため、ディーゼルエンジン自体は時代毎に技術革新があったのに、旧態然とした副室燃焼室、非過給、分配燃料噴射ポンプの技術レベルのまま時代だけが過ぎ、主要幹線鉄道は電化され、気動車は非電化亜幹線とローカル線のみに生き残っていた。私の世代の知る木原線を走っていたDMH17系はこの頃に該当する。重量の割に出力は十分でなく、設計の古さから燃費や始動性も芳しくなかったが、このエンジンを基軸としたスタンダード化が優先して推進されたことや、DMH17系に代わる軽量で高効率な大出力エンジンがなかなか実用化されなかったこともあり、このエンジンを搭載した気動車は、一般用から特急用にいたるまで長期量産されることになった。鉄道用としては点検、整備等、インフラの一律化、強調運転などのメリットが計り知れない。1968年に高出力特急型としてボアアップ、12気筒化、過給したDML30が登場し、キハ181系に搭載されたが、DMH17系改造の域を出ないものである。最新生産実績は小湊鐵道キハ200用DMH17Cで1977年に2両新造されている。開発開始から65年以上、生産が終了してから30年以上過ぎたが、今なお運行に供されているということは驚異の長寿エンジンといえる。技術革新されるのは国鉄が分割民営化されたさらに後の21世紀になってからのことで、電車との強調運転(キハ201系等)、振り子気動車(キハ283系等)、ハイブリッド気動車(キハE200等)などにDMH17系より新しいDMF11、13、15が使用されている。直接噴射、インタークーラー付き過給、コモンレール燃料噴射装置の現代ディーゼルエンジン三種の神器が装備されている。今から少し未来に名機といわれるようになるのでしょうか?

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