【新規追記】超々ジュラルミン(A7075)!

海森 寄与師老です。超々ジュラルミン(JISにいうA7075)のビレットを入手しました。『ビレットって良く聞くけど、何なの?』との質問がありました。説明不足でしたね。一般的にビレットとは、小型の鋼片です。紋章の縦長の長方形の図形が語源ですね。更に良く聞くインゴットとは、鋳塊のことです。しかし、アルミ合金に関しては、ビレットとは押出用に調整された鋳塊のことです。ビレット以外にスラブ(圧延用に調整された鋳塊)というのもあり、削り加工の母材にも。アルミ合金もインゴットは一般原材料用の鋳塊のことで他の金属材料と同じ定義です。

アルミ合金は圧延・押出という加工法がポピュラーです。鋳塊であるビレットは製品になると鍛造(鋼)になります。つまり鍛造用の鋳塊です。圧延はローラーを通し圧力を加え薄く細く伸ばす加工方法、主に板材等の製造法です。押出は素材に高い圧力を加え金型穴を通す加工方法、主にサッシ等の製造法です。ビレットが、サッシと同じ母材のことだと解りましたか?モーターサイクルやスポーツ自転車でモテ囃されているのは、【ビレットを削り出した部品】ということです。これらの部品のことを、【ビレット】と呼ぶのは、間違いということですね。しかも、ビレットよりもスラブが母材ということが遥かに多くて、中にはインゴットの削りも。

貰った超々ジュラルミン材のビレットですが、既に羊羹形状に1次加工されています。モーターサイクルのトップブリッジには良いけどアンダーブリッジとしては高さが足りません。これを用いてトップブリッジを新作するつもりになり、デイトナ675のノーマルのトップブリッジの現物測定⇒図面化しました。デイトナ675のノーマルのトップブリッジはジュラルミン(JISにいうA2017)で鍛造でアルマイトです。贅沢です。ノーマルよりもカクイイ状態にしないと、態々新規に造る意味なんてありません。日本メーカー4社は高級大型車でも鋳造で、しかもアルマイトではなく塗装!特にK社とS社が酷い造り。加工面を大きくし鋳造であることを誤魔化すか、鋳肌に直接塗装するか、鋳肌をバフがけしてクリア塗装。まあ日本メーカーは大同小異ですけどね。

A7075はAl-Zn-Mg-Cu系合金です。アルミ合金では最高強度ですが、腐食し易いので、加工後アルマイト処理が必要です。アルマイトを行うなら彩りとして色を入れますが、A7075ではアルマイトの発色が良くないし、飾り彫りをしたいので腐食するとマズいので、超ジュラルミン(A2024)に材料を変更しました。図面があって加工だけなら安く済みますし、A7075を引き取って貰い、A2024との材料差額分も使えたので更に安くなりました。千葉県内機械加工業者に依頼して、’14年2月に完成しました。

P.S1 オヤヂ電化セット用にバーハンドルを付ける?オヤヂ電化セット、又の名を、走る単身赴任セットとも呼び、簡単に述べると走行するのに直接影響ない、スマフォ、充電ソケット、ETC、レーダー探知、カメラ、時計、ナビ等が無造作にハンドルバーにクランプされ、間違っても美しくない状態のことです。ハンドルバーに、幅広いモノが、複数付いていることから、スタートレックとも呼ばれます。ハンドルにモノを付けるのは島国特有行動様式。モッズに代表されるイギリス人もですから。ヨーロッパ大陸側で観かけても、やっぱり、大陸ツーリング中のイギリス人ライダー。どう考えてもカクワルですよね?やはりバーハンドルが付かない仕様にしました。

P.S2 A7075は’36(昭和11)年、住友金属工業が、零式艦上戦闘機開発のため海軍航空廠から要請され開発したものです。後にアメリカ規格(AA7075)にもなり、平和になってからDIN規格にも盛り込まれました。鉄道車両用として知られるアルミ合金はA7075を改良したA7N01という合金です。A7075に対して、母材強度はほんの少し劣り、溶接強度が大きいのです。A7N01はモーターサイクルのアルミ製フレーム・ボディに用いられますが、今のところ加工性はA7075の方が良いといわれています。精密加工品はA7075、大きな構造品はA7N01、と棲み分けている様ですね。どちらもアルマイト処理がくすんだ発色で、A2024やA2017に比べると汚いです。鉄道車両は塗装するので問題になりません。モーターサイクルではA7075やA7N01はワークス・レーサーには多用されますが、市販車やアフターマーケット・パーツにはあまり使用されません。市販車のアルミ製フレーム・ボディでA7N01を使う場合、アルマイトではなく塗装(クリア含む)です。

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図はバイエルン公の紋章です。縁の形状(コレでは瓦形)がビレットです。場合によっては紋章の中にもビレットが存在するパターンもあります。

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写真はビレットです。アルミ合金だと、これがビレットですよ!

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写真はビレット削り出しのトップブリッジです。形状がデイトナ675に近似しているので敢えて載せました。

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写真はスタートレック状態のハンドルバー。これでもマシな方で、もっと凄いのがいます。しかし、これでは操舵するのに危険だと思えます!コレでカクイイと思っている?近い未来に電気シェーバーの充電をしながら髭剃りをする輩も出てきそうですね。防水だ!とかいってね。

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