【くろ】(畦)を歩かないでください!

海森 寄与師老です。’11年の5月連休まで、たくさんのカメラマンの方々が、いすみ鉄道沿線にいらっしゃいました。しかし、聖人君子ではないので、やはり色々とやらかしてくれています。ただ、悪いことをしたという実感はないのだと思われます。

私が地域の方々(農業)に聞いたのは、『くろに入っておいねーの!毎日、くろ塗り直しだかんの!』というものです。新田、佐室、新田野、国府台で良く聞きます。大多喜町内でも同じことが発生しているでしょう。ただ文句だけいっても何のことか解からないでしょうから農業の知識のことも踏まえて説明しますね。

【はるた】から【田植え】、【イネの初期成育】の時期までは、田は水田であり、【くろ】(畦)は保水用の土手です。したがって、水準の違う田の間には必ず存在します。ごく稀に同じ水準の田の間にありますが、持ち主が違う、作物が違う、別の時期に水を引く、等の特殊な事情の場合のみです。どちらにしても、道ではありませんし、人間の足の面圧に耐える構造ではありません。畦道という単語はありますが、水田の時期は当てはまりません。

【くろ】の塗り直しは、作業者が水田に入って、当該部分まで歩いて移動し、潰れた部分に盛り土して、さらに表面を田の中の泥で塗り固める、という重労働です。自分が悪い訳でもないのに、いすみ鉄道沿線に田があったばかりに、何度も【くろ】の塗り直しをしているのはあまりに忍びないです。被害者の方々は、いすみ鉄道沿線の住民です。いすみ鉄道にクレームをつけたりしません。【余所者】にクレームをつけるに、この文章位の長い背景を説明しないと何がクレームだか解かってもらえないから、結局はしないのです。【くろ】を塗り直す方が文句をいうより早いから、が実情ですよ。写真を撮る方も、メディアに投稿する方も、地域の知識(この場合は農業)を身に付けて欲しいものです。

P.S 梅雨が終わり、イネが丈夫に育って、田が乾田になった以後は、【くろ】も乾き人間も歩ける様になります。文字通り畦道になります。田の中はイネが育ち歩けないですしね。畦道という単語は乾田の時期限定のものです。

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